2月2日(金)から日本でも公開されるバス・ドゥヴォス監督の映画『Here』の試写をみました。多言語、多文化が共生する都市ベルギーのブリュッセル。閉塞感を抱えるルーマニア人の労働者のシュテファンと中国系ベルギー人であるコケ研究者シュシュとが出会い、かすかでひそやかで、しかし逞しいコケという存在に触れていくうちに心身のこわばりがほどけ、柔らかなつながりが生まれるというような物語。とても静かで、説明的な要素の少ない映画ですが「目線が変わると世界が変わる」瞬間が、森の中の木々やコケの鮮やかな緑の空間に描かれるのがとても印象的でした。
鳥のさえずりや風の音、光、そして音楽もすばらしく、また顕微鏡下の細胞の様子や、例えばナミガタタチゴケの「ナミ(波)」の部分までしっかり確認できるほどの拡大されたコケがスクリーンいっぱいに映し出される場面などもあり、ぜひ映画館で観て、どっぷり浸かりたいと思う作品です。
ヨーロッパの鉄道は1835年(日本では天保6年)にブリュッセルとオランダのマリンに敷かれた22kmが始まりだそうです。映画の中にもそんなセリフも登場しますが、鉄道好きの方にも眼福、耳福とおもわれる場面がいくつもありました。貨物も出てきます。ええ、わたしも鉄道好きです。
バス・ドゥヴォス監督『Here』(2023年 ベルギー)、『ゴースト・トロピック』(2019年 ベルギー)。2月2日(金)より
Bunkamuraル・シネマなどで公開がはじまります。