三十周年記念

おかげさまで蟲文庫は30周年を迎えることができました。30年店を続けられるというのは本人の努力や希望だけでどうにかなるものではありませんので、本当におかげさまとしか言いようのないことです。これからもできる限り続けていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

その30周年を記念して、武藤良子さんが描いてくださった枇杷の絵で挨拶状を兼ねたショップカードをつくりました。デザインも武藤さんです。枇杷というのはこちらからの希望でしたが、ほんとうにすばらしい枇杷の絵になりました。うれしいです。

映画『Here』

2月2日(金)から日本でも公開されるバス・ドゥヴォス監督の映画『Here』の試写をみました。多言語、多文化が共生する都市ベルギーのブリュッセル。閉塞感を抱えるルーマニア人の労働者のシュテファンと中国系ベルギー人であるコケ研究者シュシュとが出会い、かすかでひそやかで、しかし逞しいコケという存在に触れていくうちに心身のこわばりがほどけ、柔らかなつながりが生まれるというような物語。とても静かで、説明的な要素の少ない映画ですが「目線が変わると世界が変わる」瞬間が、森の中の木々やコケの鮮やかな緑の空間に描かれるのがとても印象的でした。

鳥のさえずりや風の音、光、そして音楽もすばらしく、また顕微鏡下の細胞の様子や、例えばナミガタタチゴケの「ナミ(波)」の部分までしっかり確認できるほどの拡大されたコケがスクリーンいっぱいに映し出される場面などもあり、ぜひ映画館で観て、どっぷり浸かりたいと思う作品です。

ヨーロッパの鉄道は1835年(日本では天保6年)にブリュッセルとオランダのマリンに敷かれた22kmが始まりだそうです。映画の中にもそんなセリフも登場しますが、鉄道好きの方にも眼福、耳福とおもわれる場面がいくつもありました。貨物も出てきます。ええ、わたしも鉄道好きです。

バス・ドゥヴォス監督『Here』(2023年 ベルギー)、『ゴースト・トロピック』(2019年 ベルギー)。2月2日(金)より

Bunkamuraル・シネマなどで公開がはじまります。

予告編  https://www.sunny-film.com/her

新入り

昨年の11月下旬、知人からニホンイシガメのこどもをもらいうけました。夏に卵から孵ったばかりのちびちびで、うちに来た当時は甲長3.8cmでしたが、この冬は水中ヒーターを設置して加温飼育しているため、なんだか見るたびに大きくなっており、現在 5.1cm。ひとまず元気いっぱいなのでなによりです。名前はつきちゃん。オスかメスかはまだわかりません。

写真は1月2日のもので、この時はまだ4.6cmでした。

2024年になりました

元日に能登で大きな地震がおこり、それに関連する飛行機事故もあり、国内のことだけを見ても胸がいたみ、気のふさぐ年明けとなりました。今日1月17日で阪神淡路大震災から29年。こうして「いつもどおり」帳場に座っていられるは、ほんとうに奇跡そのものだと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

通勤路のジョウビタキ

蟲文庫サコッシュ

武藤良子さんの個展「百椿図」巡回展 倉敷編にあわせて、武藤さんが「蟲文庫サコッシュ」を作ってくれました。以前作っていた蟲文庫トートの補充が難しくなって久しいのですが、来年で店も30周年だし、またオリジナルの何かあったらいいなとぼんやり思っていたところだったのです。

絵柄のモチーフは地衣類。現在は「グレー地(黄)」「グレー地(青)」「黒地(緑)」「黒地(青)」の4種類。各1880円(税込み)

トートもいいけど、サコッシュも便利でいいですよ。よろしければ!

百椿図

この春は、久しぶりに店内での展示を行いました。武藤良子さんによる『百椿図』巡回展倉敷編。

2023年3月21日(火)〜4月10日(月)

この『百椿図』(ひゃくちんず、と読みます)は、武藤良子さんが宮崎の「まごえもん椿油」からパッケージ用の椿の絵を依頼を受けて、椿の絵をたくさん描いているうちにはじまった展示です。これまで東京、盛岡、仙台、岐阜、とめぐりつつ、その都度あらたな椿の絵が生まれて行くというもので、今回の倉敷では椿の季節らしく、華やかな絵となりました(写真の左側、額に入ったまごえもんの椿の絵のあたりの5枚です)。このあとは沖縄へと巡回するそうです。

武藤さんの展示は2010年夏の『曇天画』以来13年ぶり、店内での展示そのものも2018年秋の加藤休ミさんの『一点クレヨン画展』以来5年ぶりでした。昨年秋だったか、武藤さんが「蟲さんでもまた展示ができませんか?」と連絡をくれて、わたしも「あ!それはぜひやりたいです!」と思い、そして実現しました。ここ数年は、二度にわたる骨折とコロナの流行とで、なんとか店を維持していくだけで精一杯でしたので、わたし自身は「ああ、やっとここまで来ることができたな」という感慨もありました。武藤さん、ほんとうにありがとうございました。

期間中は地元のお客さんや武藤さんのご友人はもちろん、観光地ならではの通りすがりのいろんな国の方々が覗いてくださり、たいへん賑やかな三週間となりました。ヨーロッパからお越しと思われる男性が、少しだけ日本語がわかる奥さんに聞きながら、小さい声で何度も練習してから「トテモキレイデス」と言ってくださったのも嬉しかったです。

それから、この展示にあわせて武藤さんが「蟲文庫サコッシュ」を作ってくれたので、こちらのご紹介もまたあらためて。

たぶんヤブツバキ。

乙女椿

白侘助

今年もよろしくお願いします

ぼやぼやしているうちに、前回の投稿から半年以上もたち、2023年1月も半ばとなってしまいました。この年末年始は、おかげさまで自分にも家族にも何事もなく無事に営業でき、数年ぶりになる方などにも大勢お会いすることができました。ほんとうにありがとうございました。

店の近くに総合病院がいくつもあるので、ふだんから「今日は病院で」といって覗いてくださるお馴染さんも少なくないのですが、そんなみなさんのお顔もぽつぽつ見られるようになったここ数日です。これからしばらくは倉敷のこの界隈も閑散期になりますので、ゆっくり棚の整理や補充をしていきたいと思います。ひきつづき、どうぞよろしくお願いいたします。

庭の臘梅が咲きはじめました。

韓国版と四刷

先日のくるぶしの骨折からひと月あまりたちました。おかげさまで順調に回復しており、先の大型連休も途中で2日ほど休みましたが、当初からの予定通り開けることができてほっとしています。

ところで、昨年、ちくま文庫版の『わたしの小さな古本屋』が韓国語に翻訳されました。コロナが流行りはじめる直前の2019年末に打診があって「それはぜひ」とお願いしたものの、その後、どうなることかと思っていたのですが、地道に前進し、無事発売の運びとなりました。最近、この韓国版も店に置いているおかげで、ハングルも日本語も両方読めるというお客さんが、その場で読み比べて「帯の文章も内容もそのままの雰囲気ですよ」と教えてくれたり、いまハングルを勉強しているという方から「えー!すごい!」と褒められたり、とうれしいことが続いています。

そして先月、ちくま文庫『わたしの小さな古本屋』が増刷され、第四刷となりました。2016年の発売以来、今もどこかでどなたかが手に取ってくださっているのかと思うと本当にうれしいです。ありがとうございます。解説は早川義夫さん、装画は平岡瞳さん、装幀は横須賀拓さんという自慢の一冊なのです。

くるぶし

先日、またしても骨折をしてしまいました。歩行中につまづいて、尻もちをついた拍子に足首をひねり、くるぶしの骨が折れたのです。ただ、今回はきれいに(骨のずれがなく)折れたので、入院や手術は必要なく、しばらくのあいだ固定して、骨がつくの待つことになりました。前回のことがあるので、先生から治療方針を伝えられた時は正直「ラッキー!」と思いましたが、まあ、もちろん当分は両松葉杖で自転車にも乗れないので大変なんですけどね。現在、右足にはまったく体重をかけられないのですが、この固定がとれるのが、たぶん連休明けで、その後、だんだんと体重をかける練習をして……となる予定です。立て続けなもので、友人知人から「骨がもろくなっているのでは?」と心配されているのですが、どちらかということ、前回の骨折がかなり重傷だったせいで、左右のバランスが崩れて転びやすい(お年寄りや子どものように)のが主な原因ではないかと思います。最近、近所の方から「転びにくくなる靴下」というものを教えてもらったので、もうすこし治ってきたら試してみたいと思います。

そんなこんなで、店のほうはまた休み、休みのペースですが、ぼちぼちとは開店しています。よろしくお願いします。

『コケのすきまぐらし』

 福音館書店の月刊「たくさんのふしぎ」2021年10月号『コケのすきまぐらし』田中美穂 文/平澤朋子 絵、が発売になりました。店の裏の鶴形山近辺と蟲文庫を舞台に、身近なコケのふしぎな生態を紹介しています。柔らかく愛らしく的確な平澤朋子さんの絵でないと完成しなかったと思うコケの本になりました。

 この絵本は、『苔とあるく』(WAVE出版 2007年)が出た当時、このたびの担当編集のKさんが、「ちいさなかがくのとも」の保護者向けの折り込みの取材に来てくださって、「いつか、コケの絵本を作れたらいいですね」とお話ししたのがそもそものきっかけでした。それから数年して「たくさんのふしぎ」編集部へ移られたため、だんだんと現実的なものになり、それが今年ついに完成したのです。 もちろん、その14年ほどのあいだ、ずっとコケの絵本のことばかり考えていたわけではありませんが、何も動きがない時期でも、頭の中にはずっとほんのりと存在していましたし、いよいよ取りかかりはじめてからもいろいろとあって(例:骨折)、いまこうして出来上がったものを手にして「ああ、ほんとに出来たんだな」とまずは単純に感動しています。 ただ、ずっと同じ場所で観察していても、やはり十数年の積み重ねは大きく、少しずつ知識や考えが深まったり広がったり変化したりしたので、こうしていままで時間がかかって、ほんとうによかったとも思っています。

 先日、『苔とあるく』を一緒に作った担当編集のHさんに送ったところ、すぐに電話があり、「『苔とあるく』が出来たのは「たくさんふしぎ」の『ここにもコケが…』の存在が大きいですよね、そしてそこから今度は『コケのすきまぐらし』が生れるなんて、すごいことですね」という話しをして、ふたりとも、あらためて「ふー」と電話口でため息をつくような、なんともいえない感慨にふけりました。そうなんです、『苔とあるく』が出来た、いちばん大きなきっかけは、「たくさんのふしぎ」の『ここにもコケが…』(越智典子 文/伊沢正名 写真  2001年6月号)の存在だったので、そこからさらに、今回の『コケのすきまぐらし』につながるなんて、これはほんとうにすごいことだと思います。


 最初にも書きましたが、平澤朋子さんの絵が見事なのです。さっそく読んでくれた友人知人からも「絵がすごくいいですね」「一気に平澤朋子さんのファンになりました」「素晴らしいですね、もともと植物画を描かれる人なのかな」「平澤朋子さんの絵、最高!」という感想が届いています。でもじつは平澤さんは、植物の絵を本格的に描くのは今回が初めてなのだそうです。しかも、よりによってこんなに見分け、描き分けの難しいコケが相手で、ほんとうに大変だったと思うのですが、こちらの目指すものを丁寧に汲み取って、最後の最後まで粘り強く、熱心に描いてくださり、おかげでこんな、柔らかくて愛らしくも写実的な素晴らしいコケの絵の本が出来上がりました。


 絵本は、「文」と「絵」とのバランスを取るということがとても重要で、そしてとても難しく、「何を書いて、何を書かないか」ということを、絵や展開にあわせて何度も何度も直しながら絞り込んで考えて行くということもとても勉強になりました。もともと本というのは、いろいろな人の力を借りながらの共同作業で出来上がるものですが、特に今回のような絵本は、文章を書く人、絵を描く人、そして全体をみながら舵取りをする編集者との、どれが欠けても成立しないため、作者として名前が出るわたしも、いってみれば「代表」みたいなものなのです。

『コケのすきまぐらし』に書いた「作者のことば」がwebで公開されています。こちらもぜひ読んでみてください。http://bit.ly/3DQSNuk


 「たくさんのふしぎ」は、基本的には定期購読型の月刊絵本なので、取扱いのある書店は限られますが、注文や取寄せは可能な場合もあります。お手数ですが最寄の書店でお尋ねください。もちろん蟲文庫での通信販売も歓迎いたします。定価770円とは別に、送料87円(第三種郵便)と振込手数料をご負担いただくことになりますが、よろしければご注文ください。